受講形式 会場・WEB ※WEB受講の場合Live配信のみ(録画視聴はありません) 受講対象 ・水素ガスや水素利用に関心のある方 ・業務で水素に関わっている方、およびこれから関わろうとしている方 ・水素関連部品・設備・関連機器などの利用者、設計者、実験や研究をされる方、管理者、責任者 ・水素脆性に関心のある方 予備知識 基礎から分かり易く解説しますが、材料名や強度評価についての予備知識や経験があればより理解し易いと思います(簡単な説明はする予定です)。 習得知識 1)FCやFCV(特に水素搭載方法)に関する歴史と現状 2)水素安全の具体的対策に直結する水素ガスによる事故事例の知識 3)水素設備安全性担保のための基本事項、漏れ検知方法、大量漏れの対応などの基礎知識 4)FCVの圧縮水素容器・付属品の金属材料規制に関する知識(高圧ガス保安法、道路運送車両法など) 5)高圧水素ガスによる鋼の水素脆化に関するデータ(水素固溶量との相関など) 6)水素脆化の原因となる水素の金属への固溶、拡散についての基礎知識 7)金属以外の材料への水素ガスの影響(樹脂、ゴム、希土類磁石、ひずみゲージ) 講師の言葉 カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の点から今後発展が期待されている水素について、自動車会社で燃料電池車開発に携わった経験をもとに取扱いの基礎知識を解説します。工業的には既に多量に使われている水素ですが、危険なガスとされています。それは、アセチレンガスなど他の爆発性を有するガスと異なり、著しく軽い、漏洩し易いといった性質と伴に、材料の内部に侵入し場合によっては材料破壊の要因となり大きな事故を引き起こすという特異な性質を持っているからです(水素脆性など)。 本講座では、水素エネルギー利用に欠かせない燃料電池について、その歴史から現在の動向に関する話題にも触れながら、水素の特異性やそれに対する現在の対処方法を中心に基礎知識を解説します。また、水素の特異性は使用材料の制限、設備や関連機材の特殊性、法規制などに繋がっており、高コスト化の要因の1つにもなっています。低コスト化に向けては水素取扱いに関する更なる知識や技術向上が必要です。本研修がその一助になればと考えています。
プログラム
1.導入 1-1. 水素ガスの歩み、FCVへの水素搭載方法検討の経緯 1-1. FC(Fuel Cell,水素燃料電池)の歩み 2.FCの普及状況 2-1. FCV (Fuel Cell Vehicle)の普及状況 2-2. FCV以外への展開 3.水素の爆発性とその対策(事故事例紹介など) 4.高圧水素ガスの法規・基準について 5.FCVでの材料課題(金属材料の法規制) 6.高圧水素ガス環境での金属の水素脆性 ~低合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金について講師の実験結果を中心に説明~ 6-1. 水素脆化事故事例 6-2. 高圧水素ガスによる水素脆化研究の歴史 6-3. 金属材料強度への水素ガスの影響(~70MPa) 6-3-1.引張強さ(低合金鋼,ステンレス鋼,アルミニウム合金) 6-3-2.遅れ破壊(低合金鋼) 6-3-3.疲労強度(低合金鋼) 6-4. 金属の水素脆化の原因について(固溶と拡散) ~鉄鋼材料中心とした金属と水素の関わりに関する基礎知識~ 6-4-1.金属結晶と水素 ・金属の結晶構造 ・各種金属の水素固溶度 ・鉄結晶の水素固溶位置 ・実用鉄鋼材料での水素存在位置 6-4-2.水素の分析方法(含有量分析、状態分析) 6-4-3.水素侵入のプロセス(鉄系材料) 6-4-4.水素固溶量の計算(純鉄、ステンレス鋼) 6-4-5.腐食環境での水素侵入量と疲労強度(低合金鋼) 6-4-6.水素の拡散(各種金属) 6-4-7.応力集中部への水素の拡散凝集 事故事例紹介(鉄系材料) 6-4-8.水素による脆化メカニズム推定(鉄系材料) 7.高圧水素ガス環境でのその他の材料課題 7-1. 水素と樹脂 7-2. 水素とゴム (ブリスタ) 7-3. 水素環境下でのトライボロジー 7-4. その他 (希土類磁石,ひずみゲージ) 8. 水素ガス・実作業時の安全確保-RA*の紹介 *RA : リスクアセスメント 講師紹介 略歴 1974年早稲田大学大学院理工学研究科金属工学専攻卒業。 同年、トヨタ自動車工業(株)(現、トヨタ自動車(株))入社。 技術、生産技術部門で鉄鋼材料を主とする材料開発や表面処理技術開発に従事。 鉄鋼メーカと共同での新規鉄鋼材料開発導入や、鉄鋼部品の高強度軽量化技術開発などを進めた。 1999年:燃料電池自動車開発に携わり、高圧水素、腐食といった特異環境に対応した材料の評価・選定業務を担当。 この中で世界的にも類例が少ない高圧水素環境下での鉄鋼の疲労強度の研究を進め九州大学とともに論文発表。 2012年:博士(工学)取得(九大)。 同年、トヨタ自動車(株)を退職。 最終役職は、FC(*)技術部プロフェッショナル・パートナー。 現在に至る。(*)Fuel Cell:燃料電池