◆1日目プログラム◆
1.高信頼性・高品質接着の作り込みの必須条件と目標値
(1)高信頼性・高品質接着とは
(2)開発段階での作り込みの目標値
①凝集破壊率をどのくらいにすべきか
②ばらつき(変動係数)をどの程度に抑えるべきか
③接着強度を破断強度で考えず内部破壊で考える
④接着強度の分布の最適な形は何か
2.接着のメカニズムと目標値達成のための方法
(1)接着の過程
(2)接着のメカニズム
①分子間力
②必要な分子間の距離をどう確保するか
(3)分子間力を左右する表面張力
①各種材料の接着のし易さと表面張力
②必要な表面張力はどのくらいか、測定法は
(4)表面張力を高くする表面改質
①目的
②表面改質法
③改質メカニズム
④改質事例
⑤改質時の湿度の影響
⑥改質後の接着可能時間
(5)プライマー、カップリング剤処理の効果と注意点
(6)表面粗面化の効果とマイナス効果
(7)接着の脆弱箇所(アキレス腱)はどこか
3.接着の機能・特性を損なう「内部応力」の発生メカニズムと影響諸因子、低減法
(1)内部応力で生じる不具合
(2)内部応力の種類
①硬化収縮応力(接着剤の硬化時に発生)
②熱収縮応力(加熱硬化後の冷却時に発生)
③熱応力(使用中の温度変化により発生)
④吸水膨潤応力
1)接着剤の吸水膨潤応力
2)被着材の吸水膨潤応力
⑤被着材の変形による応力
1)被着材料内部の温度むらによる変形応力
2)接着時の加圧によるスプリングバック力
(3)接着剤の粘弾性特性と応力緩和
(4)異種材接着における内部応力による不具合
①各種の変形のモード
②勘合接着における不具合
(5)内部応力に影響するその他の因子
①接着部の構造
②接着剤の塗布量、塗布位置
③接着剤の物性、部品の厚さ(剛性)
④接着剤の短時間硬化、後硬化
(6)内部応力の評価法
(7)接着層の内部応力の低減策
4.接着剤の選定、最適な設計・施工に必要なポイントとトラブル防止策
(1)必要な接着強度の種類
(2)接着剤、粘着剤の硬さ、伸びと各種強度の関係
(3)カタログの落とし穴
(4)粘弾性特性
(5)ガラス転移温度Tgと接着強度
(6)接着剤の粘度と揺変性
(7)接着層の厚さと各種強度の関係
(8)接着層の厚さ基準での設計・施工
(9)接着剤の硬さと応力集中
(10)クリープを防止する構造
(11)接着剤のはみ出しの影響
(12)塗装に適した材料が接着にも適するとは限らない
(13)気泡を巻込まない接着剤の塗布方法
(14)最適な加圧力とやってはいけない加圧の注意点
5.接着剤の種類と特徴、使用上の注意点と選定方法
(1)接着剤の分類法
(2)構造用接着剤の種類と特徴、使用上の注意点
①エポキシ系接着剤 ②ウレタン系接着剤 ③アクリル系接着剤(SGA)
(3)エンジニアリング接着剤の種類と特徴、使用上の注意点
①嫌気性接着剤 ②光硬化型接着剤 ③瞬間接着剤
(4)柔軟性接着剤の種類と特徴、使用上の注意点
①シリコーン系接着剤 ②変成シリコーン系接着剤 ③両面テープ
(5)接着剤の選び方
①欠点からの消去法による選定方法
②作業・管理のポイントからの絞り込み
6.個別質問 17:30頃から1時間程度
◆2日目プログラム◆
1.接着劣化のメカニズムと評価のポイント
(1)接着接合部における劣化箇所
(2)代表的劣化要因
(3)接着劣化のメカニズム
①熱劣化における3つの劣化モード
②水分劣化における4つの劣化モード
③光劣化における3つの劣化モード
④継続荷重によるクリープ劣化、粘弾性特性
⑤ヒートサイクル、ヒートショック劣化の要因
(4)耐久性評価における注意点(試験片と製品での差異)
①水分劣化における接着部の形状・寸法の影響
1)S/Lパラメーターの影響
2)Fickの拡散の法則と接着部の水分濃度の変化
3)細長い接着部の幅と劣化速度の関係(幅の比の二乗則)
4)水分濃度と接着強度の関係
②吸水後の乾燥による接着強度の回復性
1)劣化モードによる致命的損傷と非致命的損傷
2)致命的損傷だけの評価方法
③応力と水分による複合劣化
(5)冷熱サイクル試験における注意点
(6)耐久性評価試験の種類と加速試験条件の決め方
2.接着耐久性の長期寿命予測法
(1)寿命予測を行う時の鉄則
(2)長期熱劣化の予測法
①アレニウス法による予測法
②ガラス転移温度と予測結果の尤度の関係
(3)長期水分劣化の予測法
①アレニウス法による予測法と結果の尤度
②Fickの拡散の法則を用いた水分濃度分布からの推定法
(4)長期屋外暴露劣化の予測法
①アレニウス法と乾燥可逆性からの推定法、実験値との比較
(5)クリープ耐久性の予測法
①応力負荷の簡易治具
②温度/時間換算による推定法
③Larson-Millerのマスターカーブ法による推定法
(6)疲労耐久性の予測法
3.設計許容強度と接着部の必要強度、必要Cv値を簡易に見積もる『Cv接着設計法』
(1)『Cv接着設計法』とは
(2)『Cv接着設計法』の構成要素と考え方
①接着部に加わる力と発生不良率
②許容不良率、工程能力指数、信頼性指数
③変動係数Cv と ばらつき係数d
④劣化による接着強度の低下とばらつきの増大
⑤内部破壊係数
⑥接着強度の温度依存性
⑦安全率
(3)設計基準強度と設計許容強度の算出式
(4)初期に必要な平均接着強度・面積と変動係数の見積り例
受講者にはCv接着設計法計算アプリを差し上げます。
4.最適設計のための『耐用年数経過後の安全率の尤度の定量化法』
(1)この評価法の適用の目的と前提条件
(2)接着強度の経年変化の概念と実効接着強度、最大負荷力の関係
(3)耐用年数経過後の安全率の尤度の算出法
①評価のプロセス
②クリープや疲労などの応力劣化を伴う場合の算出式
③一時的な静荷重だけが負荷される場合の算出式
④複合劣化係数の求め方
⑤耐用年数経過後のばらつき係数の求め方
(4)耐用年数経過後の安全率の尤度の算出事例
①接着部の要求条件と評価条件への落とし込み
②加速劣化試験条件の最適化の例
1)ヒートサイクル
2)熱劣化
(5)安全率の尤度の再配分の例
①信頼度の向上(許容不良率の低減)
②作業性の改善
5.信頼性、耐久性、寿命、安全率に関係するトラブル事例
(1)ばらつきを考慮せずに平均値で設計した
(2)トラブル品での発生不良率の見積り
(3)水分の乾燥による接着強度の回復を考慮しなかった
(4)クリープが加わっている状態に気がつかなかった
(5)その他
6.個別質問 17:30頃から1時間程度
講師紹介
略歴
総合電機メーカーで、50年間にわたって、宇宙用機器、公共用機器、産業用機器、民生用機器などにおいて構造物から電子部品にいたるまで、高信頼性・高品質接着を開発、適用してきた国内でも稀な接着適用技術者で、接着の耐久性・信頼性の第一人者である。
現在の委員等:・接着適用技術者養成講座 講座長(日本接着学会 構造接着・精密接着研究会)
・接着技術者スキルアップ講座 講座長(日本接着学会 構造接着・精密接着研究会)
・日本接着学会 構造接着・精密接着研究会 役員 ほか
著書:・「わかる!使える!接着入門<基礎知識><段取り><実作業>」
・「高信頼性接着の実務-事例と信頼性の考え方-」
・「高信頼性を引き出す接着設計技術-基礎から耐久性、寿命、安全率評価まで-」
・「自動車軽量化のための接着接合入門」(いずれも日刊工業新聞社刊)
・その他、共著書籍多数