
薄膜の密着性を評価し、改善するための
薄膜の機械的性質、特に密着性およびその測定と改善方法
薄膜の内部応力の観測事例,測定法および密着性評価の注意点,改善方法等を解説する特別セミナー!!
- 講師
成蹊大学理工学部 物質生命理工学科 教授 工学博士 馬場 茂先生
- 日時
- 会場
- 受講料
- 1名:47,250円 同時複数人数申込みの場合 1名:42,000円
- テキスト
受講概要
予備知識
特になし
習得知識
PVD製膜技術のうち,密着性に関する実務技能 1)薄膜の密着性測定方法 2)薄膜の密着性改善方法
講師の言葉
スパッタリングなどのPVD製膜技術は物体(下地)の表面に10nm~1000nm(1μm)の均一な薄膜を堆積させる のに適しています。 しかし,堆積過程で物体に飛来した原子は表面上を拡散しながら,新たに飛来する原子の 影響も受けて固定化されるために,最も安定な原子配置を得ることは困難です。この原子レベルの局所的ひずみは 薄膜に内部応力をもたらします。 一方,下地の表面には汚れ,吸着原子をはじめとする様々な欠陥があり,下地と 薄膜を完全に結合させることは容易ではなく,小さな力学的刺激によって界面の破壊(=剥離)が起きやすくなって います。 講義の前半では,内部応力の観測事例と測定法を解説します。薄膜を実用化する上で密着性は重要です。 密着性の測定はいろいろな方法で行われますが,良い密着性の界面を破壊するにはスクラッチ試験しか適した 方法がありません。しかし,スクラッチで生じる応力分布は単純ではありません。しかし,その特徴を理解する ことによって,適切な解析が可能となります。特に膜厚1μm以下の薄膜の評価に適したマイクロスクラッチ試験を 中心として,スクラッチの原理を解説しながら,これまでに観測・報告されてきた事例の紹介とともに,密着性評価を 行う上での注意点を解説します。 密着性は,界面構造の改善から向上させることができますので,製膜法に 応じて,いろいろの工夫の余地が残されていると思います。
プログラム
1.薄膜の内部応力
1.1 薄膜中に生じる応力~熱応力と真性応力 1.2 PVD膜はひずむ~撓み,皺,破裂 1.3 応力とひずみ~材料力学 1.4 内部応力の測定~基板の変形/格子定数の変化~ 1.5 測定上の問題~複雑な測定結果と解釈例 1.6 ひずみエネルギーと薄膜の優先配向 1.7 薄膜における破壊力学 1.8 薄膜の内部応力を制御する
2.薄膜の力学物性
2.1 構造欠陥と硬さ 2.2 ホール・ペッチ則(HPE)とその限界 2.3 硬さから超微小硬さへ~弾性変形と塑性変形 2.4 硬さと耐腐食性:ハードコーティング 2.5 薄膜による固体潤滑
3.薄膜の密着性(=付着力)
3.1 耐久性・寿命ととしての密着性 3.2 各種の密着性測定法の長所・短所 Peel 試験,Tape 試験,Pull 試験, Topple 試験,Indentation 試験, Scratch 試験,Blister 試験,その他 3.3 故障解析からの密着性評価 3.4 故障・剥離とワイブル分布
4.スクラッチ(引っ掻き)試験
4.1 定荷重スクラッチ試験 4.2 荷重印加型スクラッチ試験 4.3 剥離,摩擦力変化あるいはAE発生 4.4 試験条件と臨界荷重 4.5 臨界せん断応力
5.マイクロスクラッチ試験
5.1 薄膜/基板の界面エネルギー 5.2 スクラッチの物理 5.3 マイクロスクラッチ試験 JIS R3255 5.4 スクラッチ試験における針先 5.5 密着性試験法とその再現性 5.6 剥離の統計的性質 5.7 剥離面生成エネルギー 5.8 微小スクラッチと微小押し込み試験の相関
6.密着性の改善方法
6.1 内部応力と密着性 6.2 異種材料の密着性 6.3 製膜技術と密着性~特にプラズマ利用技術
講師紹介
1972年 東京大学工学部物理工学科 卒業 1978年 東京大学助手,講師,助教授 を経て 1991年 成蹊大学 助教授,教授 ~ 現在に至る